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大阪地方裁判所 平成11年(ワ)2227号 判決 1999年6月17日

原告

中ノ瀬繁吉

被告

全国労働者共済生活協同組合連合会

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金一二〇〇万円及びこれに対する平成一一年三月一六日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、中ノ瀬由之運転の自動二輪車がタクシーと正面衝突し、中ノ瀬由之が死亡した事故につき、原告が、被告に対し、原告と被告間の個人定期生命共済契約に基づき、交通災害特約共済金の請求をした事案である。

一  争いのない事実等(証拠により比較的容易に認定しうる事実も含む)

1  共済契約の締結

原告は、被告との間で、左記こくみん共済(個人定期生命共済)の契約を締結した。

(一) 共済契約者 原告

(二) 被共済者 中ノ瀬由之(以下「由之」という。)

(三) 契約発効日 平成一〇年六月一日(毎年六月一日更新)

(四) 加入コース 三〇〇〇円(C)コース

(五) 組合員番号 五二二〇四九六七三

(六) 死亡日の保障内容

交通事故 一八〇〇万円

交通事故以外の不慮の事故 一二〇〇万円

病気 六〇〇万円

2  交通事故の発生及び被共済者の死亡

由之は、左記交通事故により、平成一〇年九月六日午前二時三八分頃、死亡した。

(一) 事故日 平成一〇年九月六日午前二時三八分頃

(二) 事故場所 大阪府堺市石津町四丁、国道二六号、堺高架橋、堺高架下一七・七キロポスト先路上

(三) 運転車両 自動二輪車(車台番号NC三六―一〇〇一九五四)(以下「本件二輪車」という。)

(四) 態様 由之は、本件二輪車を運転し、後部座席に友人を同乗させて走行中、一方通行道路(自動車専用道路の出口スロープ)を逆行したため、対向車である訴外石﨑正夫運転のタクシー(車両番号なにわ五五え四五九五)と正面衝突した。

3  共済金請求及びその結果

原告は、被告に対し、平成一〇年一二月九日付で、由之の交通災害特約死亡共済金一八〇〇万円の支払を請求したところ、被告は、平成一一年一月二二日付で本件交通事故は、被共済者の重大な過失により発生したものであるから、交通災害特約は免責であると主張し、基本契約での死亡共済金六〇〇万円を支払ったのみで残金一二〇〇万円を支払わない。

4  免責条項の存在

本件個人定期生命共済事業規約においては、共済契約者、被共済者または共済金受取人の故意または重大な過失によるときは、交通災害特約共済金を支払わないとされている。

二  争点

本件の争点は、被告が交通災害特約共済金の支払を免責されるか否かである。

(被告の主張)

由之は、パトカーの追跡を免れるために故意に一方通行道路を逆行したものである。少なくとも、由之には、道路の通行区分の遵守義務違反という「重大な過失」がある。

(原告の主張)

「重大な過失」とは、故意に近いような重大な過失を意味するものであって、本件のように、由之が、道路状況その他の客観的事情によって、一方通行道路を対面通行道路と勘違いをして誤って進入し逆行したことが直ちに「重大な過失」に該当するものではない。

第三争点に対する判断(一部争いのない事実を含む)

一  争点について

1  前記争いのない事実、証拠(甲二、乙一ないし三)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。

本件事故現場は、阪神高速道路堺線の延長高架道路(自動車専用道路)の国道二六号線上である。右国道は、中央分離帯が設けられ、片側二車線である。本件事故は、南行車線出口の下りスローブ追越車線上において発生したものである。高架道路の下の脇には側道があり、側道は北行・南行とも各一車線である。南行の側道は高架道路南行車線出口スロープの終点でこれと合流している。

由之は、平成一〇年九月六日午前二時三八分頃、ナンバープレートのない本件二輪車(後部座席に友人を同乗)を運転し、国道二六号線を北に向かって仲間と走行していたところ、大阪府堺市浜寺船尾町西四丁の浜寺南町三丁交差点付近で仲間の運転する原動機付自転車一台がパトカーに捕まり、警察官から事情聴取を受けた。その隙に、由之は、本件二輪車を運転して右国道を北方向に向けて逃走を開始した。右国道は、中央に中央分離帯が設けられ、途中からは高架道路と側道とに分かれている。由之は、いったん北行側道に入って走行した後、高架道路と合流した道を走り、その後、再び北行側道に入った。パトカー内に残っていた警察官は、逃走した由之に気づき、その追跡を開始したが、石津神社前交差点で高架下をUターンし、南に向かって引き返した。由之は追跡してくるパトカーが見あたらなくなったことから、石津町東三丁交差点(転回禁止地点)で高架下をUターンした。そして、由之が南行側道を南に向かって走行していたところ、前方にパトカーが北向きに停止しているのを発見した。そこで、由之は、再度Uターンをし、南行側道からそのすぐ隣りの高架道路(高架道路南行車線出口スロープ)に入り、南から北に向かって逆走しながら逃走しようとしたところ、対向してきた訴外石﨑正夫運転のタクシーに正面衝突した。

本件個人定期生命共済事業規約においては、共済契約者、被共済者または共済金受取人の故意または重大な過失によるときは、交通災害特約共済金を支払わないとされているが、その外にも、被共済者が法令に定める運転資格を持たないで運転している間に生じた事故によるときや被共済者が法令に定める酒気帯び運転またはこれに相当する運転をしている間に生じた事故によるときなども免責事由とされている。

2  右認定事実によれば、本件事故は、由之がUターン後進入しようとした道路が南行のものであることを容易に認識することができたにもかかわらず、右道路を北方向に向かって逆走した過失のために起きたものであると認められる。右過失が本件個人定期生命共済事業規約所定の免責事由たる「重大な過失」に該当するかどうかについては、「重大」という言葉の意義がそれ自体で一義的に明白なものとはいえない以上、その言葉が用いられている規約の関連部分を参照の上、その意味内容を検討するべきである。そして、右規約においては、被共済者が法令に定める運転資格を持たないで運転している間に生じた事故によるときや被共済者が法令に定める酒気帯び運転またはこれに相当する運転をしている間に生じた事故によるときなども免責事由とされているのであるから、これらの免責事由とされている問題行動の程度に匹敵するような過失は、右規約上の「重大な過失」にあたるものと解するのが合理的である。本件の逆走行為は、その問題性において、酒気帯び運転に勝るとも劣らないものであるから、前記過失は右規約の免責事由たる「重大な過失」に該当するものと解するのが相当である。

3  以上によれば、被告は、原告に対し、交通災害特約共済金の支払を免責されることになる。

よって、原告の被告に対する本件請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

二  結論

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 山口浩司)

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